ぶら下がり健康器

四季酩酊 第134回

酒坊

腹筋マシンを粗大ゴミで捨てた。俳優の宇梶がCMの「倒れるだけで腹筋」のあれである。腹囲が90㎝を超えて、スーツのズボンも喪服のズボンも合わなくなっていた。それで、楽々腹筋ができるならと飛び付いたが、CMお決まりの「個人の感想です」で、腹は凹まない。食事療法もしなければ、ぎったんばったん倒れるだけでは痩せないのだ。

「つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」と兼好法師ではないが、座卓で日暮し川柳を唸っていると、腰にくる。肩凝りも酷い。腹筋マシンを横目にみるしかない。

背丈が年々縮む。最長は167㎝あった。(孫は嘘だと言って信用しないが本当である。)9月の健康診断で計測したら、162㎝ちょっとしかない。「あごを引いて。」とおばちゃん看護師から注意を受けるが、猫背であごが引けない。

孫の運動会に行き余る時間に校庭を巡った。高低差のある鉄棒があった。懸垂が得意だったなと思い、手を掛けたが、1㎝も浮かない。ぶら下がっているだけでも大義だったが、降りて見ると体が楽だった。そういえば、40年位前に家にあった「ぶら下がり健康器」を思いだした。

さっそくパソコンでAmazonを開いた。懸垂なんて妄想だ。ただ、ぶら下がるだけでいい。あれこれ検討して注文した。腹筋マシンのあったところに、ぶら下がり健康器を置いて、気が向くとぶら下がった。20秒もぶら下がれなかったが、今はその倍は維持できる。朝起きると腰が痛い。机に向かっていると肩が凝る。ぶら下がると痛みが消える。

背丈が伸びるのを密かに期待している。

ぶら下がる ただそれだけの健康器   酒坊