四季酩酊 第60回
酒坊
久し振りに芥川賞の話題で沸いている。今までに線香花火くらいの話題はあったが、19歳の綿矢りさ「蹴りたい背中」と20歳の金原ひとみ「蛇にピアス」の最年少コンビが受賞した2004年以来の大花火である。吉本のお笑いコンビ「ピース・又吉直樹」の怪(・)進撃である。何しろ、7月30日までの発行部数が169万部(受賞式に備え更に40万部増刷と8/4のニュースにあった)という驚異的な数字だ。それまでは、村上龍の「限りなく透明に近いブルー」が131万部である。(その後の単行本を合わせると367万部になっている)
私の記憶に残る受賞作品は1960年の三浦哲郎「忍ぶ川」で、女主人公の志乃の清純さに恋をしていた。それと1964年の柴田翔「されどわれらが日々」である。芥川賞は短編に贈られるものだが、原稿用紙で300枚近い。しかし、一気に読ませた青春小説だった。
その昔文学青年だった頃、芥川賞には興味があった。又吉と同じように私も、芥川龍之介や太宰治に夢中になった時代がある。文学仲間と石原慎太郎の最年少受賞を破ろうと意気込んだこともあったが、私と同じ1943年生まれの、丸山健二が「夏の流れ」で受賞したのは23歳1カ月だったので、呆気なく負けた。丸山は電波高校を卒業し兼松で働きながらの執筆活動は、電氣科を卒業してシャープで働くという私と同じような境遇だったのでショックを受けた。
時は流れ、それではと残されたのは最年長受賞ということになる。森敦が「月山」で1973年に61歳11カ月で受賞したが、その齢を越えるには31年もかかる。森の記録は2012年に黒田夏子が75歳9カ月「abさんご」で塗り変えられた。戯言だがこれで私にも権利が生れた。しかし、私の創作活動は2007年64歳「若き日は褪せぬ(60枚)」で終わっている。又吉が少し刺激をくれたのは確かである。
「火花」はまだ読んでいない。月刊「文藝春秋9月号」で読むつもりだ。
