四季酩酊 第61回
酒坊
中年女性や老女ではない若い女面が欲しかった。小面・小姫・万媚・孫次郎・増女のどれでもよかった。
戦争の騒乱のさなか、中世の日本文学に目覚め、静謐な愛と美を追求し滅びの文学を成し得た立原正秋に傾倒した時期がある。彼の本は売らずに残してある。初期の作品「薪能」に打たれた私は、鎌倉宮で行われる鎌倉薪能を観た。抽選なので何十通も出した記憶がある。演目も忘れたが、篝火と虫の音の中で演ずる能を堪能した。このとき、妖しく動く女面を欲しいと思った。 続きを読む 能面、孫次郎を手に入れる


